「非常用にポータブル電源を1台置いておけば大丈夫だろう」——そう考えている総務ご担当者や経営者の方、少なくないのではないでしょうか。
しかし現実には、いざ停電が起きたとき「家庭用ポータブル電源では業務が全く継続できなかった」という声が後を絶ちません。電源は確かに「ある」のに、なぜ会社を守れないのか。その落とし穴を知らないまま備えてしまうと、BCP(事業継続計画)そのものが形骸化してしまいます。
私たちボルトワークスは、元自動車メーカーで品質管理・電装設計に携わったスタッフを中心に、ポータブル電源・走行充電システムの専門店として活動しています。法人のお客様から「オフィスの電源どうしたらいいか」というご相談を多くいただく中で見えてきた、BCP電源選びの本質的な課題をお伝えします。
この内容はボルトワークスのYouTubeチャンネルでも動画でご紹介しており、多くのBCP担当者の方々から「目からウロコだった」という反響をいただいています。
家庭用ポータブル電源がオフィスで通用しない3つの理由
理由1:出力容量が業務用途に対応していない
家庭向けとして販売されているポータブル電源の多くは、出力(W数)が700〜2,000W程度に設定されています(製品によって異なります)。個人の防災用途やキャンプで使う分には十分な容量ですが、オフィス環境ではまったく話が異なります。

たとえば、一般的な中小企業のオフィスを想定した場合、パソコン数台・ルーター・NASサーバー・電話システム・照明といった「最低限の業務継続に必要な機器」を同時に稼働させようとすると、瞬時に出力限界を超えてしまうケースが少なくありません。家庭用電源はあくまで「個人が使う数点の機器」を前提に設計されており、複数人が同時に業務を行うオフィス環境を想定した作りにはなっていないのです。
さらに、オフィスには業務用エアコンや大型コピー機など、起動時に大きな電力(突入電流)を必要とする機器も存在します。定格出力に余裕がない家庭用電源では、こうした機器の起動時に保護回路が働いてシャットダウンしてしまうことがあります。
理由2:稼働時間(バッテリー容量)が業務継続に足りない
停電の継続時間は事前に予測できません。台風や地震などの大規模災害時には、数時間から数日間にわたって電力供給が止まることもあります。
家庭向けポータブル電源の容量は、一般的に1,000〜2,000Wh(ワットアワー)程度が中心です(製品によって異なります)。これは消費電力100Wの機器を10〜20時間動かせる計算になりますが、オフィスで複数の機器を同時稼働させれば、実際の稼働時間はさらに短くなります。
業務継続という観点では、少なくとも「半日〜1日分の電力を確保できること」が最低ラインと考えられます。そのためには、複数台の電源を組み合わせた拡張設計か、あるいは最初から大容量の法人向け電源を選ぶ必要があります。「1台置いておけば安心」という発想では、本格的な停電には対応できないのが現実です。
理由3:設置・法令面でのリスクが見落とされやすい
これが最も見落とされやすい落とし穴かもしれません。実は、ポータブル電源の種類や容量によっては、オフィスビルやテナントに設置する際に消防法上の制約を受ける可能性があります。
リチウムイオン電池は一定の条件下で消防法上の「危険物」に該当するケースがあり、蓄電容量が大きいほどその基準に引っかかりやすくなる傾向があります。また、ビルの管理規約によっては、一定容量以上のリチウム電池製品の持ち込みや設置を制限しているケースもあります。
個人の自宅や車内での利用とは異なり、オフィスへの設置は消防法・建築基準・ビル管理規約の三重チェックが必要です。詳細な基準は地域や物件によって異なりますので、必ず最寄りの消防署や建物管理者にご確認ください。
「法人BCP用」電源に求められる4つの条件
条件1:業務に必要な機器を同時に稼働できる出力
まず社内で「停電時に絶対に止めてはいけない機器リスト」を作成することから始めましょう。パソコン・ルーター・電話(IP電話含む)・照明・POSシステムなど、業種や業態によって優先順位は異なります。

それらの合計消費電力(W)に30〜50%程度の余裕を加えた出力を持つ電源を選ぶことが基本的な考え方です。突入電流への対応という意味でも、定格出力に余裕があるほど安心です。なお、具体的な必要出力は使用する機器の仕様書に記載されている消費電力をご確認ください。
条件2:半日〜1日以上の稼働を想定したバッテリー容量
「最低でも半日は業務を継続できること」を目安に、必要なバッテリー容量(Wh)を算出します。参考として「合計消費電力(W) × 稼働時間(h) ÷ 変換効率」という考え方が使われますが、実際の稼働時間は製品の特性・使用環境・機器の状態によって異なります。カタログ値の公称容量と実測値には差が生じることがあるため、余裕を持たせた設計が安心です。
また、太陽光パネルとの組み合わせによるソーラー充電が可能な製品を選べば、停電が長期化した際にも発電しながら使い続けられる可能性があります。屋外に設置できるパネルをあらかじめ確保しておく「ソーラーBCP」も、近年注目されている備え方の一つです。
条件3:拡張性があること(バッテリー増設対応)
BCP対策は一度整備すれば終わりではなく、業務規模の変化や機器構成の変化に合わせてアップデートが必要です。そのため、外部バッテリーを増設して容量を拡張できる設計の電源を選ぶと、将来的な柔軟性が高まります。
一般的に、法人向けの大容量ポータブル電源は拡張バッテリーとの組み合わせを前提とした設計になっているものが多くあります(拡張可能な上限容量は製品によって異なりますので、メーカー公式情報でご確認ください)。
条件4:設置場所の法令・規約をクリアできること
前述のとおり、オフィスへの設置には消防法や建物管理規約の確認が不可欠です。近年では、オフィス設置を想定した安全設計を採用した業務用ポータブル電源も登場しています。製品選定の際は、メーカーが公表しているリチウム電池の種類・安全認証の取得状況・推奨設置環境なども参考にしましょう。
なお、リン酸鉄リチウム(LFP)電池は三元系リチウムイオン電池と比較して熱安定性が高いとされていますが、設置場所の法令への適合性については製品スペックだけでなく設置状況によっても判断が変わります。最終的な判断は必ず消防署・建物管理者・専門業者にご相談ください。
補助金・助成金制度を活用した導入という視点
BCP対策機器の導入には、中小企業向けの補助金・助成金制度が活用できる場合があります。中小企業庁が実施する各種補助事業や、各都道府県・市区町村の防災・減災関連補助事業などが対象となる可能性があります。

ただし、補助金の対象要件・申請期間・補助率は制度によって大きく異なり、また予算の都合上公募が終了している場合もあります。最新の補助金情報については、中小企業庁・各都道府県の産業振興機関・商工会議所などを通じてご確認ください。
こうした制度を上手に活用することで、初期投資のハードルを下げながら本格的なBCP対策を進められる可能性があります。導入をご検討の際は、補助金の専門家や当社にも一度ご相談ください。
まとめ:「とりあえず1台」から「業務を守る設計」へ
BCP電源対策の落とし穴は、「家庭用の延長線上で考えてしまうこと」にあります。

改めて整理すると、法人のBCP電源選びで押さえるべきポイントは次の3点です。
1. 出力(W):業務継続に必要な機器の合計消費電力に余裕を持たせた容量を選ぶ
家庭用では対応できないケースが多く、複数機器の同時稼働・突入電流への対応まで視野に入れた選定が必要です。
2. 容量(Wh):半日〜1日以上の稼働を最低ラインに設計する
停電がいつ終わるか読めない以上、余裕を持った設計が安心です。拡張性のある製品を選んで、将来的な増設にも対応できる余地を残しましょう。
3. 設置適法性:消防法・ビル管理規約の確認を必ず行う
オフィスへの設置は法令・規約のクリアが大前提です。製品の購入前に必ず専門家・消防署・建物管理者に確認することをお勧めします。
停電は予告なくやってきます。「備えはある」という安心感ではなく、「備えが実際に機能する」という確信を持てる状態に整えておくことが、本当のBCP対策です。
私たちボルトワークスでは、法人のお客様の業種・規模・設置環境に合わせた電源選定のご相談を承っています。「自社に何が必要か分からない」という段階からでも、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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