企業の非常用電源を検討していると、「結局どのモデルを選べばいいのか分からない」という壁にぶつかる担当者は少なくないようです。ポータブル電源市場には毎年のように新モデルが登場し、容量やスペック表を並べて比較しているうちに、自社にとって何が本当に重要な基準なのかが見えづらくなってしまうケースもあるといわれています。今回は、DJIの大容量モデル「DJI Power 2000」と、EcoFlowの「DELTA 2 MAX」という、いずれも2000Wh前後・出力2000W級の据え置き型ポータブル電源を例に、企業がBCP用途で非常用電源を比較検討する際に、どのような視点で見ていけばよいのかを整理していきます。特定の製品を優劣で断定することが目的ではなく、比較のプロセスそのものを自社の選定基準づくりに活かしていただくことを意識してまとめました。

なぜ「2000Wh・2000W級」が企業のBCP検討で候補に挙がりやすいのか
オフィス機器をひとまとめに賄える容量帯という位置づけ
企業がBCP用の非常用電源を検討する際、まず悩ましいのが「どのくらいの容量があれば足りるのか」という規模感の判断だと考えられます。ノートパソコンやスマートフォンの充電程度であれば小型モデルでも対応できますが、これに加えてデスクトップPCやルーター、簡易照明、場合によっては小型の冷蔵庫や医療機器まで想定すると、必要な容量は一気に膨らんでいきます。2000Wh前後・出力2000W級のモデルは、こうした「オフィス機能を一時的に維持する」という目的に対して、家庭用の小型モデルと業務用の据え置き型蓄電池の中間に位置する規模感として候補に挙がりやすい帯域だといえそうです。停電が数時間から半日程度続いた場合を想定するなら、この容量帯であれば主要な情報機器をひとまとめに賄える可能性が高いと考えられますが、実際にどこまで稼働できるかは接続する機器の消費電力次第であるため、自社で使用する機器の消費電力を事前に洗い出しておくことが欠かせません。
「電源が複数ある」ことの意味を見落とさない
BCP対策の文脈では、非常用電源を1台だけ導入して終わりにするのではなく、複数拠点・複数部署でどう配置するかという発想も重要になってきます。今回のように大容量帯の製品を複数メーカーから比較検討する動きが出てくるのも、1社の1モデルに依存するのではなく、拠点ごとの用途や設置スペースに応じて機種を使い分けたいという企業側のニーズの表れかもしれません。例えば本社オフィスには据え置きで大容量のモデルを、支店やサテライト拠点にはやや小型のモデルを配置するといった具合に、拠点の重要度や在籍人数に応じてグレードを分けて導入する考え方もあり得ます。1台あたりの価格が決して安くない大容量モデルだからこそ、「どこに何台配置するか」という全体設計を先に描いたうえで、個々の機種選定に進むという順番が望ましいと考えられます。
スペック表だけでは見えてこない「運用のしやすさ」
カタログスペックを並べて比較すること自体は選定の第一歩として有効ですが、実際に企業で運用する段階になると、スペック表には表れにくい要素が意外と効いてくるようです。例えば、複数人が交代で管理する体制であれば操作パネルの分かりやすさが重要になりますし、倉庫や什器庫に保管しておく場合はサイズや重量、持ち運びやすさが担当者の負担に直結します。今回取り上げる2機種のように、容量や出力の数値がほぼ同水準であっても、実際の使い勝手や管理のしやすさには違いが出てくる可能性があるため、可能であれば導入前に実機を確認したり、専門店に相談したりしておくと安心です。

DJI Power 2000とEcoFlow DELTA 2 MAXの比較に見る、企業が確認すべき視点
バッテリー方式と長期利用への考え方
近年の大容量ポータブル電源では、リン酸鉄リチウムイオン(LFP)バッテリーを採用するモデルが主流になりつつあるとされています。リン酸鉄系のバッテリーは、従来の三元系リチウムイオン電池と比較して熱暴走のリスクが低いとされ、繰り返し充放電に対する耐久性にも一定の優位性があるといわれています。ただし、公称サイクル数(繰り返し使用できる回数の目安)はメーカーやモデルによって異なり、使用環境や充放電の条件によっても実際の劣化速度は変わってくると考えられます。BCP用途では「いざという時に使えるかどうか」が長期間にわたって問われるため、公称サイクル数の数値だけで判断するのではなく、保証年数やアフターサポートの体制まで含めて確認しておくことをおすすめします。詳細な仕様や保証内容については、各メーカーの公式サイトで最新情報を確認するのが確実です。
出力性能とポート構成――同時に何を動かしたいかで見え方が変わる
定格出力とサージ(瞬間最大)出力の両方を確認しておくことも、企業利用では欠かせない視点だと考えられます。定格出力は継続的に取り出せる電力の目安であり、サージ出力は起動時に瞬間的に大きな電力を必要とする機器(コンプレッサーを内蔵する機器など)を動かせるかどうかに関わってきます。オフィス機器中心であれば定格出力の水準で足りることが多いと思われますが、業種によっては一時的に大きな電力を必要とする機器を扱う場面もあるため、自社が動かしたい機器の消費電力とサージ特性を事前に洗い出しておくことが望ましいといえます。あわせて、AC・USB-C・USB-A・DC出力といったポートの種類と数についても、自社で同時に充電・給電したい機器の数と照らし合わせて確認しておくと、導入後のギャップを減らせるはずです。
充電手段の多様性――AC・ソーラー・車載、どこまで対応するか
停電が長時間に及ぶ場合、本体の容量を使い切ったあとにどう再充電するかという視点も重要になってきます。家庭用コンセントからのAC充電はもちろん、ソーラーパネルからの充電に対応しているか、対応している場合はどの程度の入力に耐えられるかによって、災害時の運用の柔軟性は大きく変わってくると考えられます。オフィスや倉庫の屋上・敷地内にソーラーパネルを設置できる企業であれば、AC電源が使えない状況でも太陽光から継続的に電力を補給できる可能性があります。また、社用車での移動が多い業態であれば、車載での充電対応の有無も確認しておきたいポイントです。複数の充電手段に対応しているモデルほど、災害時のようにどの電源が使えるか分からない状況での対応力は高まると考えられますが、実際の充電速度や対応条件は製品によって異なるため、必ず公式情報を確認したうえで自社の運用シーンに当てはめて検討することが大切です。

サイズ・重量と設置場所の相性
2000Wh級のモデルは大容量である分、サイズや重量もそれなりのものになります。据え置きを前提に設計されているモデルが多く、頻繁に持ち運ぶというよりは、決まった場所に設置して運用するケースが中心になると考えられます。オフィスであれば什器庫やサーバールームの近く、店舗であればバックヤードなど、平常時にも邪魔にならず、かつ非常時にすぐ取り出せる場所を事前に決めておくことが望ましいでしょう。あわせて、消防法や建物の管理規約によっては蓄電池の設置場所や数量に一定の配慮が求められる場合もあるとされているため、大容量モデルを複数台導入する際は、念のため管理会社や所轄の消防署に確認しておくと安心です。
拡張性と管理のしやすさ――複数拠点運用を見据えて
一部のモデルでは、専用アプリと連携させることで、稼働状況や充電状態を遠隔から確認できる機能を備えているとされています。複数拠点に電源設備を配置する企業にとって、こうした遠隔管理機能は「どの拠点の電源が充電済みか」「異常が起きていないか」を一元的に把握するうえで役立つ可能性があります。また、増設バッテリーによって容量を拡張できるモデルであれば、導入当初は小さく始めて、必要に応じて拡張していくという段階的な導入計画も立てやすくなります。担当者の異動や拠点の増減があっても運用が続けられるよう、管理体制そのものを標準化しておくことも、BCP対策を形骸化させないためのポイントだと考えられます。

企業が非常用電源を選定・導入する際に整理しておきたいプロセス
「何のために」「どこに」を最初に言語化する
具体的な機種比較に入る前に、まずは自社が非常用電源に何を求めているのかを言語化しておくことが遠回りのようで近道になります。停電時に最低限維持したい業務は何か、対象となる拠点はどこか、想定する停電継続時間はどのくらいかといった前提を整理しておくことで、必要な容量帯やポート構成、拡張性の有無といった判断基準がおのずと絞り込まれてくるはずです。逆にこの前提が曖昧なまま製品比較を始めてしまうと、スペックの高さだけで選んでしまい、実際の運用シーンとミスマッチが生じる可能性があります。
稟議・予算確保を見据えた比較資料の作り方
大容量モデルは決して安価な投資ではないため、社内で稟議を通す際には、単純なスペック比較だけでなく、投資対効果や複数年での運用コストまで含めた資料を用意しておくと説得力が増すと考えられます。例えば、想定される停電時間・被害額の目安と、電源導入によって守れる業務範囲を並べて示すことで、経営層にとっても投資判断がしやすくなるはずです。あわせて、複数メーカー・複数モデルの見積もりを比較検討した経緯を残しておくことは、調達プロセスの透明性という観点でも有効だと考えられます。補助金や助成金の対象になる場合もあるとされているため、導入時期によっては自治体や関連団体の公募情報もあわせて確認しておくとよいでしょう。
専門店に相談するという選択肢
大容量ポータブル電源は製品の選択肢が広がっている一方で、自社だけでどのモデルが最適かを判断するのは難しいと感じる担当者も少なくないはずです。法人向けにポータブル電源の導入を数多く手がけている専門店であれば、自社の業種・拠点数・想定リスクをヒアリングしたうえで、容量帯や拡張性、複数拠点での管理体制まで含めて相談に乗ってもらえる可能性があります。スペック表を読み込むだけでなく、実機を確認しながら検討したいという場合には、実機体験ができる拠点を持つ販売店に相談してみるのも一つの方法です。停電への備えというと、つい「容量が大きいものを選んでおけば安心」と考えてしまいがちですが、実際に企業で運用する段階になると、出力性能やポート構成、充電手段の多様性、設置場所との相性、そして拠点をまたいだ管理体制まで、確認しておきたい視点は多岐にわたります。DJI Power 2000とEcoFlow DELTA 2 MAXのように、容量帯が近い2機種を並べて比較してみるだけでも、自社にとって何を優先すべきかという判断基準が見えてくるはずです。私たちボルトワークスは、元自動車メーカーとしての知見を生かし、法人のお客様の非常用電源選定についてもご相談を承っています。自社のBCP対策としてどのモデルを選ぶべきか迷われているご担当者の方は、ぜひ一度お気軽にお声がけください。
