拠点数や社用車の台数が増えていく企業ほど、非常用電源の導入計画は「今ある台数」ではなく「これから増える台数」を前提に組み立てる必要が出てくるようです。導入時点でぴったりの容量を選んでしまうと、翌年に営業所が増えたり、社用車が1台追加されたりするたびに、電源設備そのものを見直さなければならなくなるケースがあるためです。今回は、拠点別・車両別に電源を配備していく企業が、導入段階でどこまで拡張性を織り込んでおくべきかについて、実際の製品検証を踏まえて整理してみました。

「今の台数」で選んだ電源が数年後に足りなくなる理由
非常用電源の導入は、多くの場合「現在の拠点数・車両数」を基準に容量やユニット数を決めることになります。しかし企業の車両や拠点は、事業の状況によって増減するものであり、導入時点の最適解が数年後も最適とは限らないようです。
単年度の予算で「今必要な分だけ」を買ってしまう構造
BCP(事業継続計画)用の電源設備は、多くの企業で単年度予算の枠内で検討されることが多いとされています。そのため、稟議を通しやすくするために「今年度に必要な最小限の台数」だけを購入し、翌年度以降の増設は改めて検討する、という進め方になりがちなようです。この進め方自体は予算管理上は合理的に見えるものの、電源設備の場合は機種選定のやり直しや型番の廃盤といった別のリスクを招くことがあります。
拠点や車両が増えるたびに機種選定をやり直す非効率
最初に導入した電源と同じ機種が、数年後の増設タイミングで販売終了になっているケースは珍しくないとされています。その場合、新たに別機種を選定し直す必要が生じ、拠点ごとに異なるメーカー・型番の電源が混在してしまうことがあります。操作方法や充電ケーブルの規格が拠点によってばらばらになると、いざという時に現場の担当者が戸惑ってしまう可能性も否定できません。
管理側の負担は「台数」ではなく「機種の種類」で増える
電源設備を管理する立場から見ると、負担が増えるのは単純な台数の多さというより、機種のばらつきの多さであることが多いようです。点検周期やファームウェアの更新有無、消耗品の型番などが機種ごとに異なると、管理台帳も機種の数だけ増えていきます。拡張のたびに機種を統一できるかどうかは、管理コストを左右する重要な観点になりそうです。

増設を前提にした電源選定で確認しておきたい仕組み
拠点や車両の増加を見越して電源を選ぶ際には、単体の容量や出力だけでなく、「後から台数を増やせる仕組みになっているか」という観点での確認が欠かせないと考えられます。
拡張ユニットとして複数台を連携できる設計かどうか
近年のポータブル電源の中には、本体単体で使うだけでなく、同型のユニットを複数台連携させて容量を積み増していけるよう設計された製品もあるとされています。動画で紹介されていたEVOPOWのように、1台あたり1280Wh程度の容量を持つユニットを、必要に応じて数台〜十数台単位でつないでいける仕組みがあれば、拠点ごとの必要容量に応じて柔軟に台数を調整しやすくなるようです。最初から大容量の一体型を導入するのではなく、標準ユニットを積み増していく発想は、拠点数が読みきれない企業ほど検討する価値があるかもしれません。
BMS(バッテリーマネジメントシステム)内蔵という安全面の前提
複数のバッテリーユニットを連携させる場合、各ユニットの充放電状態を個別に管理できるBMS(バッテリーマネジメントシステム)が内蔵されているかどうかは、安全性の観点で確認しておきたいポイントとされています。BMSが各セルの状態を監視することで、過充電や過放電、ユニット間の状態のばらつきといったリスクを抑えやすくなると言われています。複数台を連携させる前提の製品を選ぶ際には、連携できる最大台数だけでなく、その際の管理方式についても販売店に確認しておくと安心です。
実車での動作検証が公開されているかという判断材料
カタログスペック上は連携台数が多くても、実際の車両環境でどこまで安定して動作するかは、実機での検証情報がなければ判断しづらい部分です。動画のように、実車を使って複数台を接続した状態での充放電挙動を検証している情報が公開されている製品であれば、導入前の判断材料として参考にしやすいと考えられます。逆に、そうした実証情報が乏しい製品を拡張前提で選ぶ場合には、自社での実機検証を導入前に行っておくことをおすすめします。
充電経路・ケーブル規格が増設時にも共通化できるか
ユニットを増やしていく前提で選ぶ場合、充電経路やケーブルの規格が増設時にも共通のまま使えるかどうかも確認しておきたい点です。走行充電・AC充電・ソーラー充電など、複数の充電経路に対応した製品であれば、拠点の環境(駐車場の有無、コンセントの位置など)が異なっても同じ運用ルールで管理しやすくなるようです。増設のたびに充電方法まで拠点ごとに変わってしまうと、現場の担当者に求める知識も増えてしまいます。

複数拠点・複数車両への配備計画をどう組み立てるか
製品側の拡張性が確認できたら、次はそれを自社の拠点・車両計画にどう当てはめていくかという運用設計の話になります。
拠点ごとの必要容量を先に洗い出しておく
拡張前提で電源を選ぶとはいえ、闇雲にユニットを増やしていけばよいわけではありません。まずは各拠点でどの程度の非常用電源容量が必要になるのか、想定する停電時間や、優先的に稼働させたい機器(照明・通信機器・冷蔵設備など)から逆算して洗い出しておくことが、無駄のない配備計画の前提になります。この洗い出しができていれば、「本社は5ユニット、営業所は2ユニット」といった拠点別の配備基準を作りやすくなるはずです。
車両管理担当と防災・BCP担当の情報共有
社用車への走行充電器付き電源の配備を検討する場合、車両を管理する部署と、防災・BCPを所管する部署が別々になっている企業も少なくないようです。拡張計画を立てる際には、どの車両にいつ電源を載せるのか、車両の入れ替えサイクルとどう擦り合わせるのかといった情報を、両部署で早い段階から共有しておくことが望ましいと考えられます。担当が分かれている企業ほど、増設のタイミングで情報の行き違いが起きやすいとも言われています。
段階的な増設計画を稟議のタイミングに合わせて組む
単年度予算の制約がある企業の場合、最初から全拠点分をまとめて導入するのが難しいことも多いはずです。その場合は、拡張性のある機種を選んだうえで、「今年度は本社と主要拠点、来年度は残りの拠点」といった形で段階的な増設計画をあらかじめ描いておくと、稟議のたびに機種選定からやり直す事態を避けやすくなります。計画段階で複数年度分の増設イメージを共有しておくことは、単発の稟議を通すための説明材料としても有効かもしれません。

導入後の点検・保守を一本化できる体制の確認
複数拠点に同じ系統の電源を配備できたとしても、点検や保守の窓口が拠点ごとにばらばらだと、結局は管理の手間が増えてしまいます。導入時には、販売店やメーカーが複数拠点分の点検・保守をまとめて対応できる体制を持っているかどうかも、あわせて確認しておきたいポイントです。窓口が一本化できていれば、増設のたびに新しい業者を探す手間も抑えられそうです。
また、拠点数が多い企業ほど、増設のたびに現地へ足を運んで打ち合わせをするコストも無視できません。オンラインでの相談や、既存導入拠点の実績をもとにした見積もり提示にどこまで対応してくれるかも、増設が繰り返される前提で付き合っていく相手を選ぶうえでは、意外と効いてくる観点かもしれません。

まとめ|「今の台数」ではなく「増える前提」で電源を選ぶ
拠点数や社用車が増えていく企業にとって、非常用電源の導入は一度きりの買い物ではなく、事業の成長に合わせて継続的に拡張していく設備投資として捉えたほうが、結果的に無駄が少なくなるようです。ユニットを連携させて容量を積み増していける設計か、BMSによる安全管理がなされているか、実車での検証情報が公開されているか。こうした観点を最初の選定段階で確認しておくことが、数年後に「機種がばらばらで管理が大変になった」という事態を避け、拠点ごとの配備計画を無理なく積み上げていくための現実的な進め方になりそうです。
単年度の予算で完結させようとせず、複数年度をまたぐ拡張計画として最初から捉え直しておくこと。それが、拠点や社用車が増えるたびに一からやり直す非効率を避け、BCP用の電源体制を長期的に維持していくための、遠回りに見えて実は近道になる考え方なのかもしれません。
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