企業のBCP(事業継続計画)担当者から「非常用のポータブル電源はもう導入済みです」というお話をよく伺います。しかし詳しく話を聞いてみると、その多くが「大容量の電源を1台、倉庫に置いてある」という状態にとどまっており、それをどう充電し続けるかという「次の一手」まで検討が及んでいないケースが少なくありません。停電が数時間で復旧するならそれでも問題は起きないかもしれませんが、実際の災害では停電が数日にわたることも珍しくなく、1台の電源が空になった時点で、その先の電力確保をどうするかという問いに直面します。
私たちボルトワークスは、元自動車メーカーに勤務していたスタッフを中心に、ポータブル電源や走行充電器に関する情報を発信しているコミュニティです。自動車業界で培った品質管理や電装まわりの知見を生かし、法人のBCP担当者の方にも実務で使える情報をお届けすることを心がけています。YouTubeチャンネルでは製品の開封や実機検証の様子を配信しており、特に「充電手段をどう複線化するか」というテーマは、視聴者の皆様から反響をいただくことが多い話題のひとつです。今回は、大容量ポータブル電源BLUETTI「AC180P」と走行充電器「Charger 1」を組み合わせて紹介した動画をもとに、法人の非常用電源を「単体」で終わらせず「二重化」する考え方について整理してみたいと思います。なお製品仕様は動画内の紹介およびメーカー公表値に基づくものであり、実際の性能は使用環境や個体差により異なる場合がありますので、導入をご検討の際は必ずメーカーの最新の公式ページをご確認ください。

なぜ「電源が1台」では止まるのか、単一障害点というBCPの盲点
非常用電源の導入というと、多くの企業ではまず「何Whの電源を、何台買うか」という調達の話に意識が向きます。しかし本当に問われるべきは、その電源が空になったときに次の電力をどこから確保するかという、充電経路の設計です。
容量表示だけを見て安心してしまう理由
カタログやスペック表には「1440Wh」「2000Wh」といった容量の数値が大きく記載されており、担当者としてはこの数字が大きければ大きいほど安心だと感じやすいものです。もちろん容量は重要な指標ですが、あくまで「今持っている電気の総量」を示す数値にすぎません。照明やノートパソコン、通信機器などを稼働させ続ければ、容量がどれだけ大きくても、いずれは残量がゼロに近づいていきます。停電が長期化した場合、容量の大きさだけでは事業継続を担保しきれないという前提に立つ必要があります。
「充電手段が1つ」に潜むリスク
多くの企業では、非常用電源の充電手段としてコンセントからの家庭用電源(AC充電)のみを想定しているケースが見られます。しかし停電時にはそのコンセント自体が使えなくなるため、AC充電に依存した設計は、停電が発生した瞬間に「充電できない電源」になってしまうという矛盾を抱えています。ソーラーパネルや走行充電器といった、停電時でも機能する充電経路をあらかじめ組み込んでおくことが、実効性のあるBCP電源設計の前提になると考えられます。
サーバーの冗長化と同じ発想を電源にも
IT部門であれば、サーバーや通信回線を複数系統で冗長化し、一方が停止してももう一方で業務を継続できるように設計するのは基本的な考え方だと思います。非常用電源についても、同じ発想を適用できます。据え置き型の大容量電源と、社用車を活用した走行充電という2つの経路を組み合わせておけば、片方の充電が思うように進まない状況でも、もう片方でカバーできる可能性が高まります。電源そのものを二重化するのではなく、「充電する手段」を二重化するという視点が、実務的には現実的な落としどころになりやすいところです。

走行充電器と大容量電源を組み合わせるという選択肢
据え置き型の大容量電源と、社用車を活用した走行充電器を組み合わせた場合、実際にどのような運用イメージになるのかを、動画で紹介されたBLUETTI「AC180P」と「Charger 1」の組み合わせを例に見ていきます。
停車中も走行中も充電できる二系統構成
AC180Pはコンセントからの家庭用電源だけでなく、ソーラーパネル、そしてCharger 1のような走行充電器からの入力にも対応しています。オフィスや倉庫に設置した状態ではAC充電で満充電にしておき、停電などでAC充電が使えなくなった場合には、社用車のエンジンをかけて走行充電に切り替える、という運用が可能になります。この「据え置き」と「移動可能な充電手段」の両立が、単一の電源だけでは実現しにくい柔軟性を生み出します。
AC180Pの容量・出力に見る据え置き用途の余裕
メーカー公表値によれば、AC180Pの容量は1440Wh、定格出力は1800W(瞬間最大出力2700W)とされています。リン酸鉄リチウム(LiFePO4)系のバッテリーセルを採用しており、純正弦波出力とMPPT充電制御に対応、UPS(無停電電源)機能も備えているとされています。定格出力に余裕があることで、照明・通信機器・小型のOA機器などを同時に稼働させる場面でも対応しやすく、法人の据え置き用途として一定の実用性を持つ容量帯だと考えられます。ただし瞬間的に高負荷がかかる機器を接続する場合は、瞬間最大出力の範囲内であるかを事前にメーカーへ確認しておくことをおすすめします。
Charger 1の充電速度と保護機構
Charger 1は、車のオルタネーター(発電機)の余剰電力を活用してポータブル電源を充電する機器で、メーカー公表値では最大560Wでの出力に対応しているとされています。一般的なシガーソケットからの充電がおよそ80〜100W程度にとどまるのに対し、Charger 1はその数倍の速度で充電できる計算になり、移動時間を電力確保の時間として有効活用しやすくなります。また動画内では、車のバッテリー電圧が一定以下に下がった場合には自動的に保護モードへ移行して充電を停止する機能や、エンジン停止後は数秒で自動的にシャットダウンする機能が紹介されており、社用車のバッテリー上がりを防ぐ設計が組み込まれている点も、法人の車両管理という観点では安心材料になり得ます。動作温度についても、氷点下から高温の環境まで幅広く対応しているとされており、冷却ファンによる自動制御も備えているとのことです。
95%以上の他社製品に対応する互換性という保険
Charger 1は、BLUETTI製品だけでなく、他社のポータブル電源にも幅広く対応しているとメーカーは案内しており、動画内でもおよそ95%以上の互換性があると紹介されています。複数拠点や複数車両で運用する企業の場合、拠点ごとに導入済みのポータブル電源のメーカーが異なるという状況も起こり得ますが、走行充電器側の互換性が高ければ、既存の電源資産を大きく入れ替えることなく充電経路だけを後から追加できる可能性があります。この汎用性は、段階的にBCP電源体制を整えていきたい企業にとって、検討しやすいポイントのひとつだと言えるでしょう。

企業が二重化を導入する前に整理しておきたいこと
走行充電器と据え置き電源の組み合わせは有効な選択肢ですが、実際に導入する前には、いくつか自社の実情に照らして確認しておきたい点があります。
車両の使用実態から充電量を逆算する
走行充電はあくまで「走っている時間」に比例して充電が進む仕組みです。停電時に社用車をどの程度稼働させられるのか、通勤や業務でどの程度の走行時間を確保できるのかは、企業や拠点によって大きく異なります。走行充電だけに過度に依存するのではなく、AC充電やソーラー充電と組み合わせた上で、走行充電を「補助的な、しかし停電時にも機能する経路」として位置づけておくと、現実的な運用設計になりやすいと考えられます。
ソーラーパネルという第3の充電経路
動画内でも触れられている通り、停電が長期化した場合、AC充電も走行充電も難しい局面が生じる可能性があります。エンジンをかけ続けるわけにもいかず、コンセントも使えない状況では、日照さえあれば充電できるソーラーパネルが、もうひとつの現実的な選択肢になります。据え置き電源・走行充電器・ソーラーパネルという3つの経路を組み合わせておくことで、単一の手段に依存しないBCP電源体制に近づけられるでしょう。
複数拠点・複数車両での展開設計
1拠点であれば電源と走行充電器を1セット用意すれば済みますが、複数拠点を持つ企業の場合、拠点ごとにどの社用車を充電用に位置づけるか、走行充電器をどの車両に常設するかといった配備設計が必要になります。特に営業車のように日常的に走行距離が長い車両は、走行充電による恩恵を受けやすい一方、あまり稼働しない予備車両では期待するほど充電が進まないこともあるため、拠点ごとの車両運用実態を洗い出した上で、どの車両に走行充電器を割り当てるかを検討しておくとよいでしょう。
保証・サポート体制も「二重化」の一部
据え置き電源にせよ走行充電器にせよ、機器そのものが故障してしまえば、二重化の意味が薄れてしまいます。保証年数や、故障時の代替機対応、取り付けサービスの有無といったサポート体制も、広い意味での「事業継続を止めないための備え」の一部だと捉えることができます。特に走行充電器の取り付けは配線作業を伴うため、DIYでの施工にはリスクも指摘されています。専門の施工サービスを利用できるかどうかも、導入前に確認しておきたいポイントです。

まとめ|電源そのものより「充電経路」を二重化するという発想
非常用電源の導入を検討する際、私たちはつい「容量の大きさ」や「価格」といった、電源本体のスペックに意識を向けがちです。しかし今回ご紹介したように、据え置き型の大容量電源と走行充電器を組み合わせることで、AC充電が使えない停電時にも電力を確保し続けられる可能性が広がります。これは経済的な観点で見れば、既存の電源資産を活かしながら充電経路だけを拡張できるという合理性があり、安全面から見れば、単一の充電手段に依存しないことで「電源はあるのに充電できない」という事態を避けやすくなるという意味があります。そして運用面では、社用車という既存の資産を非常用電源の一部として位置づけ直すことで、追加の設備投資を最小限に抑えながら備えを強化できるという利点もあります。今回取り上げたBLUETTI AC180PとCharger 1の組み合わせはあくまで一例ですが、自社の車両運用実態や拠点構成に照らし合わせながら、電源そのものだけでなく「充電経路の二重化」という視点で非常用電源の体制を見直していただければと思います。導入をご検討の際は、専門の販売店に相談しながら、自社に合った構成を見極めることをおすすめします。

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