停電対策というと、まず「照明が消えないようにする」「最低限の業務が回るようにする」といった全体的な備えが話題にのぼりがちです。しかし実際にオフィスで停電が起きたとき、真っ先に困る場面のひとつが、サーバーやルーター、複合機、電話交換機といった情報インフラ機器の突然のシャットダウンではないでしょうか。データが正しく保存されないまま電源が落ちてしまえば、業務データの破損や取引先とのやり取りの中断につながりかねません。今回は、企業のBCP対策として非常用電源を検討する際に、オフィスのIT機器・テレワーク環境という視点からどう電源計画を考えればよいか、業務用ポータブル電源を軸に整理していきます。

なぜオフィスの停電対策は「発電機ではない解決策」を必要とするのか
発電機がオフィスに向かない理由(騒音・排気・建物規約)
停電時の電源確保というと、エンジン式の発電機を思い浮かべる方も少なくないかもしれません。ただしオフィスビル内での使用を考えると、発電機にはいくつか越えにくいハードルがあると考えられます。稼働時の騒音は執務スペースの環境を大きく損ないますし、排気ガスが発生する構造上、屋内やビル内の閉じた空間での使用は基本的に想定されていません。加えて、テナントビルであれば管理規約や消防法上の取り扱いによって、そもそも発電機の持ち込みや稼働自体が制限されているケースも多いはずです。こうした事情を踏まえると、オフィス内で完結させたい非常用電源については、発電機とは別の選択肢を検討する必要性が高いといえそうです。
サーバー・通信機器という「止められない機器」の存在
オフィスの中には、瞬間的にでも電源が落ちると業務に大きな影響が出る機器が存在します。社内サーバーやNAS、ネットワーク機器、電話交換機などがその代表例です。停電が起きた瞬間に強制シャットダウンしてしまうと、保存中だったデータが破損したり、再起動に時間がかかったりする可能性があります。さらに、こうした機器の多くは日常的に稼働しっぱなしであることが前提のため、「非常時だけ電源をつなぐ」という運用よりも、停電の瞬間から機器への電力供給が途切れないような仕組みのほうが相性がよいと考えられます。ポータブル電源の中には、通常時はコンセントからの電力を通しながら、停電を検知すると瞬時に内部バッテリーへ切り替わるタイプの製品もあり、こうした特性はサーバー類の保護という観点で注目に値するはずです。
テレワーク普及で変わった停電時の業務継続の考え方
働き方が多様化し、オフィスに全社員が常駐しているとは限らない企業も増えてきました。停電が起きた際、オフィス側の設備を守るだけでなく、社外から接続してくる社員の業務が滞らないようにする視点も欠かせなくなっています。オフィス側のネットワーク機器やクラウド接続の窓口が停電で落ちてしまえば、たとえ社員が自宅で無事に作業できていても、社内システムへのアクセスができず業務が止まってしまう可能性があります。オフィスという「拠点」の電源をどう守るかは、そこにいる社員だけでなく、そこにつながる全社員の業務継続にも関わってくる論点だと考えられます。特にVPN接続の窓口となる機器や社内チャット・グループウェアのオンプレミスサーバーなどは、社外からのアクセスを支える「見えないインフラ」であるだけに、その存在が停電時にこそ意識されやすくなるのではないでしょうか。平常時にはあまり意識されない設備ほど、いざという時の影響範囲は大きくなりがちだという点は、BCP担当者としてあらかじめ整理しておきたい観点のひとつだと考えられます。
法人向け非常用電源が担うべき役割とは

瞬断でもデータ消失を防ぐ「無停電」的な役割
法人利用における非常用電源に求められる役割のひとつが、いわゆる無停電電源装置(UPS)に近い機能だと考えられます。停電が発生してから電源を切り替えるまでの間にわずかでもタイムラグがあると、精密機器やサーバーにとっては十分なダメージになり得ます。そのため、瞬時に電力供給を引き継げるかどうかは、製品選定における重要な確認ポイントのひとつになるはずです。あわせて、停電中にどれだけの時間、対象機器へ電力を供給し続けられるかという持続時間の見積もりも欠かせません。サーバーを安全にシャットダウンするまでの時間を確保できるかどうかで、必要な容量の目安も変わってくると考えられます。
容量と出力のバランスをどう考えるか
非常用電源を選ぶ際には、単純な容量(Wh)の大きさだけでなく、瞬間的にどれだけの電力(W)を出せるかという出力面のバランスも確認しておきたいところです。オフィスで稼働させたい機器の消費電力を洗い出したうえで、同時に稼働させる想定の機器がすべて動くだけの出力を確保できているかを見積もっておく必要があります。容量ばかりを重視して出力面を見落としてしまうと、いざという時に必要な機器がすべて動かせない、という事態にもつながりかねません。製品ごとの仕様は各メーカーの公式情報で必ず確認したうえで、自社の運用に見合った容量・出力のモデルを選ぶことをおすすめします。
拡張性・複数拠点運用という視点
事業所やオフィスを複数抱えている企業であれば、拠点ごとに必要な電源容量も異なってくるはずです。近年のポータブル電源には、増設用のバッテリーを追加することで容量を拡張できるタイプの製品も登場しており、拠点の規模や重要度に応じて構成を変えられる柔軟性は、法人利用において魅力的なポイントだと考えられます。将来的な事業拡大やオフィス移転の可能性も見据えながら、必要に応じて後から容量を積み増せる仕組みを選んでおくと、都度買い替える手間を減らせるかもしれません。本社機能を持つ拠点と支店・営業所とでは、守るべき機器の重要度や台数も異なることが多いため、拠点ごとに必要最低限の容量を見極めたうえで、後から拡張できる余地を残しておくという考え方は、初期投資を抑えつつ将来の変化にも備えられる現実的なアプローチだといえそうです。複数拠点をまとめて管理する立場のBCP担当者であれば、拠点間で機種や運用ルールを揃えておくことも、有事の際の対応をスムーズにする一助になるはずです。
導入を検討する際に確認しておきたいポイント

設置場所・管理規約・消防法上の留意点

非常用電源をオフィスに導入する際は、設置場所についても事前に確認しておく必要があります。テナントビルの場合、管理規約によって一定容量以上の蓄電池の持ち込みに条件が設けられていることもあるため、契約内容や管理会社への確認は欠かせないステップだといえます。消防法など関連法令上の取り扱いも製品や設置状況によって異なる可能性があるため、不明点があれば最寄りの消防署や専門業者に確認しておくと安心です。オフィスのどのスペースに設置し、どのように配線するかをあらかじめ図面ベースで検討しておくことも、導入後のトラブルを避けるうえで有効だと考えられます。
運用ルールとメンテナンス体制の整備
非常用電源は「導入して終わり」ではなく、日常的な充電状態の確認やメンテナンスがあってはじめて非常時に機能するものです。誰が定期点検を担当するのか、充電残量をどう確認するのか、いざという時にどの機器から優先的に電源をつなぐのかといった運用ルールを、事前に決めておくことが望ましいと考えられます。担当者の異動や組織変更があっても対応が途切れないよう、マニュアルとして残しておくことも有効な備え方のひとつです。停電時に慌てて操作方法を確認するようでは、初動対応が遅れてしまう可能性もあるため、平常時からの訓練や周知も合わせて検討しておきたいところです。総務や情報システム部門など、担当が複数部署にまたがるケースでは、誰がどの範囲まで責任を持つのかをあらかじめ明確にしておくことも重要だと考えられます。停電を想定した簡単な避難訓練やシステム切り替え訓練のタイミングに合わせて、非常用電源の動作確認も一緒に行っておくと、実際の運用イメージを社内で共有しやすくなるはずです。
専門店へ相談するという選択肢
オフィスのIT機器保護やテレワーク環境の継続性を踏まえた電源計画は、業種や拠点構成、稼働機器の内容によって最適な組み合わせが変わってくるため、自社だけで判断するのが難しいと感じる場面も少なくないはずです。法人向けにポータブル電源の導入を数多く手がけている専門店であれば、稼働機器の消費電力や設置環境をヒアリングしたうえで、容量・出力・拡張性まで含めて相談に乗ってもらえる可能性があります。BCPの観点からオフィスの電源計画を見直したいとお考えのご担当者の方は、製品選定の前段階からでも、一度専門家に相談してみる価値はあるのではないでしょうか。
停電対策というと非常用の照明や最低限の設備稼働がまず語られがちですが、実際の業務継続を考えると、サーバーや通信機器といった「止められない機器」をどう守るかという視点は見過ごせません。発電機のように騒音や排気の制約を受けず、瞬時に電力供給を引き継げる非常用電源を組み合わせておくことで、停電時にもデータを守りながら業務を継続できる可能性が高まります。テレワークが定着した今、オフィスという拠点の電源をどう守るかは、そこに集う社員だけでなく、そこにつながる組織全体の業務継続力にも関わってくるテーマだと考えられます。私たちボルトワークスは、元自動車メーカーとしての知見を生かし、法人のお客様の電源計画についてもご相談を承っています。オフィスの停電対策を見直したいとお考えのご担当者の方は、ぜひ一度お気軽にお声がけください。

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