元動画:ポータブル電源「MILIN(ミリン)」を技術者が解説した動画(https://www.youtube.com/watch?v=_4gmulGdX2o)
本記事は、2021年3月ごろに公開された動画を、現在の視点で振り返る回です。動画では、日本のクラウドファンディングで支援を募っていたポータブル電源MILINが、容量662Wh、出力600Wの製品として紹介されていました。デザインや軽さ、充電の速さなど見どころの多い動画ですが、ここでは中盤で語られた「変換効率」の場面に絞って読み直します。BCP(事業継続計画)の備えとして電源を選ぶとき、表に書かれた容量の数字だけを見ていると、実際に使える量とのあいだに差が生まれることがあります。その差をどう数え、どう備えに反映するかを考えるのが、この記事の狙いです。なお、MILINの現在の取り扱い状況や、動画の時点から仕様が変わっていないかどうかは、今回は確認できていません。数値はすべて動画の説明に基づくものとして読み、導入を検討される際は、必ず最新の公式情報をご確認ください。価格や支援の条件は当時のもので古いため、本記事では取り上げません。

表記容量と、実際に使える量は同じとは限らない
動画の解説では、ポータブル電源の内部には、電池の直流の電気から必要な電圧をつくるコンバーターや、家電を動かすための交流に変えるインバーターが組み込まれていると説明されていました。電気は、この変換を通るたびに、一部が熱などになって失われます。ここでは、動画の説明をもとに、その考え方を整理します。
動画で語られた「従来は80%、MILINはAC90%・DC95%」
動画によると、従来のポータブル電源は、インバーターの変換効率が一般に80%ほどと言われていたそうです。たとえば1,000Whのポータブル電源を買っても、実際に使える量は800Whほどにとどまり、表記より少ない、という例が挙げられていました。これに対してMILINは、ACの変換効率が90%、DCの変換効率が95%と紹介されています。この数字は動画の中での説明であり、測定条件や出典までは示されていませんでしたので、そのまま一般化することはできません。それでも、「表記の容量が、そのまま使える量ではない」という考え方は、備えを数える際に役立つと考えられます。
662Whの電源で、どれくらい差が出るのか
考え方の練習として、動画の数字を当てはめてみます。容量662Whの電源で、変換効率が80%なら、取り出せる量はおよそ530Wh、90%ならおよそ596Whという計算になります。差は60Wh余りで、ノートパソコンの充電や、小さな照明を数時間つなぐ分に近い量です。もちろん、実際の効率は負荷の大きさや温度、機種によって変わりますので、この計算はあくまで目安です。ただ、台数をそろえる法人の備えでは、この差が台数分積み重なる点が見逃せません。
ACとDCで、効率が違うという視点
動画では、ACの効率が90%、DCが95%と、出力の種類ごとに数字が分けて紹介されていました。直流のまま使える機器なら、交流に変える手間が省けるぶん、ロスが小さくなる傾向があると考えられます。たとえばMILINには、12Vを取り出せるDC出力ポートが2つあり、動画ではDIYのキャンピングカーでLEDライトやウォーターポンプにつなげる使い方が語られていました。事務所や店舗の備えでは、使う機器が直流のまま動かせるのか、交流が必要なのかを、あらかじめ一覧にしておくと、電源の選び方にも役立ちます。
動画では、容量662Whの目安として、テレビなら約8.5時間、スマートフォンなら約60回分の充電ができる、という説明がありました。画面にも、機器ごとの目安を並べた表が映っていました。
動画の「テレビ8.5時間」を割り算で確かめる
画面には、32インチのテレビ(60W)で約8.5時間という表示がありました。662Whを60Wで割ると約11時間になり、表示の8.5時間はそれより短い値です。つまり、この目安には、変換のロスなどがすでに織り込まれている可能性があると考えられます。ただし、どのような前提で計算された数字なのかは、動画の中では説明されていませんでした。ここから学べるのは、容量を消費電力で割った「理論上の時間」と、製品が示す「目安の時間」には、差があるのが普通だということです。
備えの見積もりには、余裕の係数をかけておく
BCPで必要な電力量を見積もるときは、守りたい機器の消費電力に使いたい時間をかけて、必要なWhを出す方法が一般的です。その結果を、そのまま電源の容量と比べると、変換ロスのぶん足りなくなる恐れがあります。たとえば、必要量の1.2倍から1.3倍ほどを目安に、余裕を持たせて考える方法があります。この係数は筆者の整理であり、製品や使い方で最適な値は変わりますので、実際には、使う予定の機器と電源の組み合わせで、一度試して確かめておくことをおすすめします。
小さな機器ほど、変換のロスが目立ちやすい
一般に、消費電力の小さい機器をAC経由でつなぐと、電源側の待ち受けの電力などの影響で、効率が下がりやすいとされています。これは動画では語られていない点で、筆者の補足です。停電時に、通信機器や小型の端末を長時間動かす想定があるなら、USBなど直流で給電できる経路を使えるか、事前に確認しておくと安心です。

変換効率の差を、備蓄の運用に落とし込む
ここからは、動画の内容をなぞるのではなく、BCPの備えとして、この考え方をどう運用に取り入れられるかを考えます。以下は筆者の整理であり、事業所の規模や機器によって当てはまり方は変わると思われます。
仕様書は「表記容量」と「出力ごとの効率」を並べて見る
電源を比較するときは、容量の数字だけでなく、変換効率が書かれているかどうかを確認する項目に加えておくと、比較の軸が増えます。効率が書かれていない製品については、販売店やメーカーに問い合わせる、という手順をあらかじめ決めておくと、稟議や見積もりのやり取りも進めやすくなります。
守る機器を、AC必須とDC・USBで可の2つに分ける
事務所の機器を洗い出す際、「交流が必要なもの」と「直流で動かせるもの」に分けておくと、電源の使い方を設計しやすくなります。たとえば、スマートフォンの充電やLED照明は直流側で賄い、交流が必要な機器は最小限に絞る、といった考え方です。こうして分けておくと、限られた電力を、守る機器に優先して回しやすくなります。
訓練で、残量の減り方を実際に測る
カタログの数字と、現場の減り方がどれだけ違うかは、実際に使ってみないとわかりません。年に一度の訓練などで、守る予定の機器をつないで一定時間動かし、残量がどれだけ減ったかを記録しておくと、自社の「使える量」が見えてきます。気温などによって結果は変わりますので、数字は目安として扱い、毎回の訓練で更新していくのが現実的です。
周波数や充電経路も、導入前の確認項目にする
動画では、日本は東日本が50Hz、西日本が60Hzと周波数が分かれていること、MILINは50Hzと60Hzの両方に対応していると紹介されていました。複数の拠点を持つ法人では、拠点ごとに地域が違うことがあります。周波数への対応や、AC・USB・シガーソケット・ソーラーなどの充電経路は、導入前の確認項目として整理しておくと、後から困りにくいと考えられます。

古い動画と、クラウドファンディング品を備えの参考にする時の確認点
この動画は5年近く前のものです。製品情報の読み方には、いくつか注意が必要です。
動画の数値は、当時の説明として読む
動画の説明では、容量662Wh、最大出力600W、全面に端子が並ぶ設計、ACアダプターとUSB Power Deliveryを合わせた最大220W入力、0%から80%まで約2時間、満充電まで約4時間、重さ6.8キロなどが紹介されていました。これらは動画の説明であり、メーカー公式ページでの再照合はできていません。同じ製品でも、販売時期によって仕様や保証が見直されることがありますので、古い数値は参考程度にとどめてください。
クラウドファンディングで買う製品は、継続調達の可否も見る
動画の時点では、MILINは日本のクラウドファンディングで支援者を募っていた段階でした。こうした方式で手に入れる製品は、追加の購入や修理、保証の窓口が、一般の販売品とは異なる場合があります。法人で複数台をそろえる際は、同じ型番を継続して調達できるか、故障時の連絡先はどこか、といった点を、購入前に確認しておきたい項目です。現在の取り扱い状況は、今回は確認できていませんので、公式の案内を必ずご確認ください。
走行充電や軽さなどの利点も、運用と合わせて評価する
動画では、片手で持てる軽さや、走行充電が従来の約20Wから40〜50Wほどに強化されたことも、利点として語られていました。一方で、動画の中でも、液晶が小さく明るさが控えめな点や、当時すでに80Wほどの走行充電が登場していた点は、気になる点として挙げられています。利点と弱点の両方を知ったうえで、置き場所や使う人、使う場面に合うかどうかを考えるのが、備えの選び方の基本になります。

まとめ:容量を選んだあとは、使い切れる量まで数える
動画は、軽さ、端子の配置、充電の速さ、そして高い変換効率を軸に、MILINの魅力を伝えるものでした。BCPの視点でこれを読み直すと、「表記容量」と「使い切れる量」を分けて考えるという視点を加えられます。仕様書で出力ごとの効率を確認する、守る機器をACとDC・USBで分ける、訓練で残量の減り方を測る、という三つの運用を決めておくだけでも、備えの精度は上がるはずです。数値や仕様は変更される可能性がありますので、最終的にはメーカーや販売店の最新情報をもとに判断してください。

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