大容量のポータブル電源をオフィスの片隅に置いてあるから、停電が起きても数日は大丈夫。そう考えて安心してしまっているBCP担当者の方は、意外と多いのではないでしょうか。しかし、もしその停電が1日や2日では終わらず、1週間続いたとしたらどうなるでしょうか。どれだけ大容量のバッテリーを備蓄していても、充電し直す手段がなければ、電力は数日のうちに完全に尽きてしまうと考えられます。
過去の大規模災害が教えてくれるのは、電気は思っているほど早くは復旧しないという厳しい現実です。長引く停電による事業停止のリスクを最小限に抑え、社内に確実な電力インフラを構築するためには、単に「容量の大きい製品を一つ買う」という発想から一歩進む必要がありそうです。この記事では、BCP担当者という立場から、1週間規模の停電を想定したときにポータブル電源をどう選び、どう運用していくべきかを整理していきます。

「バッテリーさえあれば安心」という思い込みがBCPでは通用しない理由
過去の大規模停電が示す「数日から2週間」という現実
電気の復旧は他のインフラに比べて早いと言われることが多いのですが、大規模な災害が起きた際にはその前提が崩れることがあるとされています。1995年の阪神淡路大震災では、電気の復旧までに平均で6日程度を要したといわれ、2018年の北海道胆振東部地震では、道内のほぼ全域にあたる約295万戸が停電するブラックアウトが発生したと伝えられています。さらに2019年の台風15号では、千葉県を中心とした一部地域で2週間以上にわたって停電が続いたという記録も残っています。災害の規模によっては、数日どころか1週間、場合によってはそれ以上の停電を想定しておく必要があるといえそうです。BCP担当者としては、まず「電気はいずれすぐ戻る」という前提そのものを一度疑ってみるところから検討を始めるのが望ましいのかもしれません。
容量を使い切った時点で機能が止まる設計の落とし穴
一般的なポータブル電源は、あらかじめ充電しておいた電気を使い切ったら、それで終わりという設計になっているものが少なくありません。停電1日目は「電源があるから大丈夫」という余裕があったとしても、3日目には残量が心もとなくなり、5日目には充電した電気が尽きて本当に業務が止まってしまう、という事態も起こり得ます。容量の数字だけを見て導入を決めてしまうと、想定より早く電力が枯渇し、肝心なタイミングで機能しないという、BCP対策としては本末転倒の結果になりかねません。
発電機やモバイルバッテリーが企業運用に向かない理由
停電対策と聞いて、昔からあるガソリン発電機を思い浮かべる方も少なくないと思います。燃料さえ補給できれば長時間の運転が可能な点は確かに魅力ですが、オフィスや避難スペースでの使用を想定した場合には、騒音と排気ガスという決定的な弱点があるとされています。排気ガスが出る以上、屋内や人が密集する場所では使用できず、屋外であっても夜間は近隣への騒音が問題になり得ます。また、燃料となるガソリンは保管や管理が難しく、いざという時に劣化してエンジンがかからないというリスクも抱えているといわれています。一方で、スマートフォンの充電程度を想定した小型のモバイルバッテリーでは、パソコンや通信機器、冷蔵設備などを稼働させるだけの出力が足りません。だからこそ、屋内でも静かに使え、排気ガスも出さない大容量のポータブル電源が、現実的な選択肢として企業のBCP対策に選ばれやすいのだと考えられます。
BCP担当者が最初に洗い出すべき「止められない業務」
具体的な製品を比較する前に、BCP担当者がまず取り組んでおきたいのが、自社にとって「止めてはいけない業務」の洗い出しです。電話やメールなどの通信手段、サーバーやネットワーク機器、業種によっては冷蔵・冷凍設備や医薬品の保管、店舗であればレジや決済端末、そして何より従業員の安否確認や避難誘導に必要な最低限の照明や通信手段など、業種や拠点によって優先順位は変わってくるはずです。この洗い出しをせずに容量や出力の数字だけを比較してしまうと、実際に必要な電力量とはかけ離れた製品を選んでしまう可能性があるといえます。

事業を止めないための3条件、容量・出力・拡張性という視点
必要出力は「同時に動かす機器」から逆算する
予算やイメージで「大は小を兼ねる」と大きめの製品を選んでしまうよりも、実際に同時に稼働させたい機器から必要な出力を逆算していく方が、無駄のない選定につながりやすいとされています。ノートパソコンやルーターといった小型の機器を中心に考えるのか、最低限の照明や空調まで含めて考えるのかによって、必要な容量や出力は大きく変わってきます。まずは平常時に、停電時にどうしても動かし続けたい機器の消費電力を洗い出し、それに必要な稼働時間を掛け合わせておおよその目安を試算しておくことが、遠回りに見えて確実な近道になるといえそうです。
後から容量を増やせる「拡張設計」がBCPに向く理由
長期の停電を見据えたとき、一般的なポータブル電源のように「あらかじめ貯めておいた電気を使うだけ」の設計では、数日で限界を迎えてしまうと考えられます。そこで重要になってくるのが、必要に応じて後からバッテリー容量を追加できる拡張性を備えたモデルです。たとえば制御ユニットとバッテリーユニットを組み合わせて使う本格的なシステムでは、定格出力5,000W前後というクラスの製品も存在し、バッテリー側を複数台まで接続することで、合計容量を数倍にまで拡張できる設計になっているとされています。導入初日から最大構成をそろえる必要はなく、まずは必要最低限の構成から始めて、予算や拠点の重要度に応じて段階的に増やしていけるという考え方は、社内稟議を通しやすいという実務上のメリットにもつながりやすいのではないでしょうか。
「無停電で切り替わる」機能が持つ意味
このような拡張型のシステムの中には、コンセントと機器の間に常時つないでおくことで、停電が発生した瞬間も電力供給が途切れない、いわゆるUPS的な機能を備えているとされるモデルもあります。サーバーやネットワーク機器のように、一瞬の電力の途切れがデータ消失や再起動といったトラブルにつながりかねない設備にとって、この「切り替わりの速さ」は容量の数字以上に重要な意味を持つ場合があると考えられます。停電が起きてから電源を持ち出してつなぐのではなく、平常時からつないでおけるという運用のしやすさも、BCP用途としては見逃せないポイントです。
ソーラー併用という「電力の自給自足」への一歩
どれだけ拡張性のあるモデルを選んでも、コンセントからの充電ができない状況が長引けば、いずれ電力は尽きてしまいます。この長期化するケースに備える手段として、ソーラーパネルをオプションで組み合わせておくという考え方があります。晴れた日中に少しずつでも太陽光から電力を補充できれば、電力が完全に枯渇するリスクを下げ、より長い期間にわたって電力を自給しやすくなると考えられます。1週間規模の停電を想定するのであれば、ソーラー対応の有無は導入前に確認しておきたい条件の一つといえそうです。

複数拠点・複数部署をどう備えるか、導入の実務
全拠点一斉導入ではなく優先順位をつける考え方
複数の拠点や部署を抱える企業の場合、すべての拠点に同時に本格的な電源を導入しようとすると、予算面でもハードルが高くなりがちです。そこで現実的なのが、サーバー室や本社機能など優先度の高い拠点から一台を導入し、実際の運用を確認しながら他の拠点へ広げていくという段階的な進め方です。一度にすべてをそろえる必要はなく、まずは「止まったときに最も影響が大きい場所」から手をつけるという優先順位の考え方が、限られた予算の中でも現実的にBCP対策を前に進める助けになると考えられます。
据え置きと可搬、拠点特性に応じた使い分け
拠点によって求められる電源の性格も変わってきます。たとえば1,440Wh程度の容量と1,800W前後の定格出力を備えるとされる比較的コンパクトなモデルは、リン酸鉄リチウムイオン電池を採用し長期間の保管にも向いているとされ、可搬性にも優れているため、停電が起きた瞬間に最も電気が必要な部屋や部署へすぐに持ち運べるという機動力が強みになります。一方、サーバー室や本社の基幹部分には、拡張性を備えた据え置き型の大容量システムを配置し、動かしたい範囲が広い拠点には機動力のあるモデルを充てるといった使い分けが、実務としては合理的だと考えられます。
保守・代替機・サポート体制まで含めた選定
電源本体の性能だけでなく、購入後のサポート体制まで含めて検討しておくことも、法人としての備品管理という観点では重要です。保証期間はどのくらいか、万が一の故障時に代替機を借りられる体制があるか、導入後も電話やチャットなどで相談できる窓口が用意されているかといった点は、いざという時に「動かない」という最悪の事態を避けるために欠かせない確認項目だといえます。防災用の機材は日常的に使うものではないからこそ、購入して終わりにせず、長期的に付き合えるサポート体制が整っているかどうかまで見ておくと安心材料が増えるはずです。
法人向けの防災パッケージという考え方
最後に、既製品を一つ選ぶという発想だけでなく、従業員数やオフィスの規模、拠点ごとに動かしたい機器に合わせて、ポータブル電源とソーラーパネルなどを組み合わせた法人向けの防災パッケージを検討するという選択肢もあります。担当者一人で全ての機種選定や容量計算を抱え込むのではなく、専門家に相談しながら自社に合った構成を組み立てていく進め方の方が、結果的に無駄のない投資につながりやすいのではないでしょうか。

ここまで、1週間規模の長期停電を想定したときに、BCP担当者としてポータブル電源をどう選び、どう運用していくべきかを整理してきました。大切なのは、容量の大きさだけを基準に一台を選ぶのではなく、拡張性・無停電での切り替え・ソーラー併用といった視点を組み合わせ、拠点ごとの優先順位に応じて段階的に備えを整えていくという考え方です。すべてを一度に完璧にそろえる必要はなく、まずは最も影響の大きい拠点から手をつけ、運用しながら見直していくという進め方でも十分に意味があるといえるでしょう。私たちボルトワークスは、元自動車メーカーで培った品質管理や蓄電池の知見をもとに、どの拠点に何台、どのくらいの容量が必要かといった実務的なご相談にも対応しています。自社だけで判断がつかないという場合は、ぜひ一度お気軽にお声がけください。

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